多色刷り木版画について

木版画。どなたでも小学校又は中学校時代に一度はやったことがあるのではないでしょうか?

一枚の板に下絵を書き、彫刻刀で彫り、インクをローラーで載せ、紙を被せ、バレンで刷る、という方法が一般的でしょう。その場合、インクは一色で、黒と白のコントラストの表現になります。

それに比べ、多色刷りはいったいどうやって何色も色を載せるの?なぜ隣り合った色が混ざりあわないの?不思議ですね。

多色刷りの木版画の制作過程をご紹介します。



 

 

1.デザインを考えます。

今回は秋になると実がカラフルに色づく「野葡萄」に「シジュウカラ」を遊ばせてみました。

大きさは、ポストカード大です。

 

 

2.原画にトレーシングペーパーをのせ、なぞります。

ずれないようにマスキングテープで止めてなぞります。

 

 

3.版木にカーボン紙、原画をうつしたトレーシングぺーパーを重ね、鉛筆でなぞります。

このとき、トレーシングペーパーを左右反転させます。

そして多色刷版画の場合、見当(色を重ねて刷る際にずれないようにするための目印)も忘れずに付けます。

 

 

4.色を載せる部分と輪郭の部分を2つに分けて、原画を写した状態です(左が色を載せる色版、右が輪郭の墨用の版)。版木に原画を写したら、マジックペンでなぞります。

そして水で薄めた墨汁を刷毛で塗ります。版木を彫ったときに彫った箇所をわかりやすくするためです。

 

 

5.版木を彫っていきます。左が色版、右が墨用の版です。

前の工程で版に薄墨を塗っているので、彫り残した部分が、薄く黒くなっています。

 

 

 

 

6.これは色版と墨の版を、わざと別々に刷ったところです。今回は2つの版を作りましたが、作品の大きさや色の重ね方等によって、3つ、4つの版を彫る場合もあります。

 

紙を載せ、まず色版を刷り、墨の版を刷ります。

 

 

7.刷り上がりです。

微妙に版がずれたり、かすれたり、版木の彫り残しがあったりもしますが、それも全部ひっくるめて、味わいがあるのが、木版画の良いところです。